TSMC N3P採用製品は最大24%値上げ、2nm世代では50%上昇の可能性

iPhone 17シリーズで採用されているA19チップはTSMCの最先端プロセスであるN3Pで製造されており、今後IntelやAMD製CPUが同様のプロセスを使用するほか、さらにその先の2nm系のN2P採用も計画されています。しかし、このTSMCのN3PやN2Pについて製造コストが大幅に上昇し、採用製品の値上げが避けられない状況になるとの懸念が出ているようです。

TSMC 3nmの改良版N3Pは初代N3Bより最大24%値上げ。

Androidスマートフォン向けチップを設計するMediaTekとQualcommは、最新フラッグシップチップである「Dimensity 9500」および「Snapdragon 8 Elite Gen 5」を年内に投入予定です。これら2つのチップは、AppleのA19チップと同様にTSMCの最新N3P製程を採用し、性能と電力効率の両面で向上を図っています。

しかし、サプライチェーンからの情報によると、この世代のQualcommおよびMediaTek製チップセットは3nm世代の改良版であるN3Pを採用していることから、ウェーハあたりの単価が大幅に上昇し、チップセットの供給価格は現行のDimensity 9400に対して16%から24%の上昇幅を記録しているとのことです。これはスマートフォン向けチップセットだけでなく、PC向けCPUやデータセンター向けCPU・GPUにも同様の価格上昇圧力がかかることが懸念されます。

TSMC 2nmはさらに値段が高騰。ウェーハあたりの単価は50%増しの可能性も

2026年にはIntelやAMDが2nmを採用した製品を本格的に投入予定ですが、業界内では既に、TSMCの先進プロセスにおける巨額な設備投資により、3nmプロセス比で最低50%の価格上昇が避けられないとの見方が広がっています。また、TSMCは最新プロセス投入時には歩留まりなどの課題もあることや、高いコストから採用を見送る企業も多いことから、割引や価格交渉などを受け付ける傾向にありましたが、2nmにおいてはこれらの割引措置なども実施されない見込みです。

そのため、コンシューマー向けかつダイサイズが小さなスマートフォン向けチップセットにおいても大幅な値上げは避けられず、供給価格はSnapdragon 8 Elite Gen 5で予想されている190ドルから280ドル程度に押し上げられ、最終的にこれらのチップを搭載する製品の価格に大きく影響すると見られています。また、よりダイサイズが大きく、求められる性能が高いCPUやGPUにおいては、より値上げ幅が大きくなる可能性もあります。

チップ設計の最適化やハイエンドのみ先端プロセスなど使い分けが重要に

こうした価格上昇圧力を受けて各社は、技術革新による対策のほか、マーケティング的な対策の2つの側面から対抗しようとしています。AMDはCPUのRyzenやEPYCにて小さなダイサイズで構成されたチップレットを複数搭載することで性能を追求する方法を採用していますが、TSMC 2nmを採用するZen 6世代でもこの構造が採用される予定です。また、Intelも同様に2nm採用のNova Lakeにおいてタイルアーキテクチャと呼ばれるチップレット構造を採用することが確実視されています。

また、製品ラインアップに応じて製造プロセスを使い分ける戦略も用いられると見られており、AMDはZen 6のうち、デスクトップ向けやサーバー向けなど価格よりも性能が求められる用途でのみTSMC 2nmを活用し、コストパフォーマンスが重視されるノートPC向けCPUにはTSMC 3nmなどより成熟したプロセスノードを使用するとされています。

こうした工夫を通じて各社は価格を可能な限り抑える努力を行うと考えられますが、それでも各プロセスの値上げ幅が非常に大きいことから最終製品の値上げはやむを得ない状況となる可能性が高く、買い替えサイクルの延長やフラッグシップ製品の販売低迷などのリスクも出てくると見られています。今後各社がどのような価格帯で最先端プロセスを採用した製品を投入するのか注目が集まります。

この記事を書いた人

Kazukiのアバター Kazuki 編集兼運営者

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
自作PC歴は10年以上、経済などの知識もあるため、これらを組み合わせて高い買い物でもある自作PCやガジェットをこれから買おうと思ってる人の役に立てるような記事を提供できるよう心がけています。

コメント

コメントする


目次