30年以上続いたDRAMでのサムスン一強時代が終焉
PCやスマートフォン、グラフィックスカードなど幅広い電子製品に使われるDRAMは、長年にわたり韓国のサムスンが売上高で首位を維持し、その下にSK Hynixなど他メーカーが続く構図が続いてきました。ところが、市場調査会社のまとめによれば、2025年上半期のDRAM市場において、33年間トップに君臨してきたサムスンが初めて2位に転落し、SK Hynixが1位に浮上したことが明らかになりました。
SK Hynix伸長の理由はAIブームによるHBM特需
2022年以降のAIブームでは、大規模な学習に大量のAI用GPUが必要とされます。従来のGDDR6などでは帯域幅が不足するため、DRAMを多層に積層したHBM(High Bandwidth Memory)が活用されるようになりました。このHBM分野で強みを持つのがSK Hynixであり、AI用GPUの爆発的な需要を背景に売上高シェアを大きく伸ばしたと見られています。
売上高シェア | 2025上半期 | 2024 |
---|---|---|
Samsung | 32.7% | 41.5% |
SK Hynix | 36.3% | 33.4% |
SK Hynixのシェアの伸びは顕著で、2022年には27.7%、2023年には29.9%、2024年には33.4%と着実に拡大し、2025年上半期には36.3%に到達しました。一方サムスンは2024年に41.5%を誇っていたものの、最新の集計では32.7%へと大きく落ち込んでいます。
特にSK Hynixは、AI用GPUで圧倒的なシェアを持つNVIDIA製品に独占的にHBMを供給しているため、NVIDIAの販売が伸びれば自社の業績も連動して伸びる構造になっています。さらにHBMはDDR5などに比べて帯域幅が非常に広く、SK Hynixは唯一NVIDIA向けにHBM3eを供給していることも高付加価値化につながり、シェア拡大を後押ししていると考えられます。
一方サムスンは、NVIDIAのサプライチェーンに食い込もうと試みていますが、品質や性能面で課題を抱え苦戦しています。AMDやBroadcomへの供給も行っていますが、AI用GPU市場ではNVIDIAほどの存在感がないため、売上の伸びに直結していない状況です。
SK HynixのHBMでの優位性は今後も続く。一方のサムスンはコンベンショナルなDRAMで対抗?
SK HynixはHBMに関して技術力と生産ノウハウを兼ね備えており、サムスンに対して優位な立場に立っています。次世代規格HBM4でもSK Hynixが先行してサンプル出荷を開始しており、2026年投入予定のNVIDIA次世代「Rubin GPU」に搭載されると見られています。そのため、AI需要が続く限り、売上高シェアでも優位を維持すると予想されます。
一方、サムスンも巻き返しを図っています。NVIDIA向けHBM供給の交渉や技術開発を進めるほか、HBM4の開発・量産に取り組んでいます。また、同社はDDR5やLPDDR5x、GDDR7といった幅広いDRAMラインアップを強化する戦略を進めており、実際にNVIDIAのGeForce RTX 5000シリーズでは発売当初にサムスン製GDDR7が独占供給されました。
今後の市場は、NVIDIA製GPUの需要動向に大きく左右されると見られます。AI需要が依然として高い状況を踏まえると、2025年内はSK Hynixが首位を維持する可能性が高いと考えられます。ただし、サムスンもHBMや汎用DRAMでのシェア拡大を狙っており、SK Hynixが逃げ切るのか、それともサムスンが巻き返すのか、30年以上続いたDRAM市場の勢力図がどう変化するのか、今後の動向に注目が集まります。
コメント