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AIブームのツケが一般家庭を直撃。アメリカでは電気料金が最大36%高騰

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AIブームの裏で電気代が大幅高騰中?

OpenAIは2025年8月初めに、最新鋭モデルを採用したChatGPT-5を発表しました。このGPT-5の開発および運用には、約20万台のGPUが使用されていたことが明らかになっており、GPUだけでも一般家庭約40万世帯分に相当する電力を消費するなど、AI開発や運用には非常に多くのリソースが必要とされています。

ChatGPT 5 はGPUだけで一般家庭約42万世帯分の電力を消費

そんなAIですが、データセンター建設が盛んなアメリカにおいて電力需要に対応するために発電設備そして電力網が対応できず、そのコストが一般家庭の電気料金に直撃し始めていることが明らかになりました。

AIデータセンターが原因で平均6.5%ほどエネルギー価格が高騰。一部州では36.3%も高騰

AI向けのデータセンターでは、GPT-5のようなモデルの学習や、「GPT-5 Reasoning」など推論処理のために、大量の超高性能GPUを用いて演算が行われます。これには莫大な電力が必要であり、ジョンズ・ホプキンス大学のエネルギー研究者であるアブラハム・シルバーマン氏によれば、「AIのトレーニングセンターは1施設で数百〜数千メガワットを消費することがある」と述べています。また、AIによる電力需要を賄うためには、新たに5基の原子力発電所を追加する必要があるとも指摘しています。

このように、AIデータセンターが引き起こす電力需要の急増は、すでに具体的な数値として現れています。

たとえば、アメリカ東部のニュージャージー州トレントンでは、一般家庭の月間電気代が平均26ドル(約3,900円)増加。オハイオ州コロンバスでも、月平均27ドル(約4,050円)増えたことが明らかになっています。また、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2025年5月時点における家庭向け電力料金は、前年の1kWhあたり16.41セントから6.5%増の17.47セントへ上昇しています。特に値上がりが著しい地域では、メイン州で36.3%、コネチカット州では18.4%の価格高騰が見られました。

もちろん、こうした電気代の上昇がすべてAIデータセンターに起因するわけではなく、インフレの影響もあります。しかし、東部13州に電力を供給するPJM社の独立市場監視機関の分析によれば、最近の急激な電気料金の上昇の約75%が、現在稼働中および建設計画中のデータセンター需要に起因するものだとされています。この分析が正しければ、たとえばオハイオ州コロンバスでの約4,000円の電気代上昇のうち、約3,000円がデータセンターに起因している計算になります。

急激な電力需要増に対応できないインフラ

Microsoft、Google、Metaなどの大手IT企業は、AI分野への投資を積極的に進めており、PJM社の管轄地域内だけでも、Microsoftは1,200億ドル、Metaは720億ドル、Googleは250億ドルを投じて巨大なデータセンター建設を進めています。しかし、その運営に必要な電力を供給するための電力網は、ここ数年の急激な需要増に対応しきれておらず、発電設備は効率の悪い発電所に依存せざるを得ない状況です。さらに、電力網自体にも大きな負荷がかかっていると報告されています。

一方で、データセンターを運営する企業も当然ながら電気代を負担しています。しかし、想定以上の電力消費により、バージニア州を中心に電力を供給するドミニオン・エナジー社は、こうした大口電力消費者に対して、電力網のアップグレード費用を公正に負担するよう規制当局に要請しており、この負担がなければ2030年までに電気料金が最大25%上昇する可能性があることを明らかにしています。

AIの進化と時間軸が合わないインフラ開発

AIは毎年新しいモデルが登場し、それに必要な大規模なAIデータセンターの建設は3年あれば完成できます。しかし、新たな発電所の建設には火力発電でも5〜10年、原子力発電では15年近くかかるとされています。

そのため、AIの進化は今後もGPUの性能向上によって加速する可能性がありますが、一方で発電設備や電力網の限界が、その進化の足かせとなる懸念も浮上しています。そのため、より効率的な学習・推論手法の開発や、GPU自体の性能向上だけでなく電力効率の改善も重要な課題となってくると言えます。

また、日本国内でもデータセンター建設が注目を集めつつありますが、原子力発電所の再稼働や老朽化した発電所の置き換えなどは依然として難航している状況です。このため、将来的に日本でもデータセンター建設が進めば、電力需給のバランスが崩れ、インフラ更新が必要となるとともに、アメリカと同様に電気料金の上昇が懸念されます。

この記事を書いた人

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
自作PC歴は10年以上、加えて経済やマーケティングなどの知識もあるため、これらを組み合わせて高い買い物でもある自作PCやガジェットをこれから買おうと思ってる人の役に立てるような記事を提供できるよう心がけています。
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