NVIDIAが中国向けH20 GPUの再生産に壁。Blackwell系のデータセンター向けGPUを優先生産へ?
NVIDIAは、Hopperアーキテクチャを採用するH100 GPUに対し、アメリカ政府による中国向け先端半導体への輸出規制に対応した特別モデル「H20 GPU」を開発していました。しかし、2025年4月にアメリカ政府がこの規制を大幅に強化したことで、H20 GPUは事実上の販売停止に追い込まれていました。
ところが、NVIDIAは2025年7月にアメリカ政府との交渉を経て、中国への先端半導体輸出に関する規制緩和を勝ち取りました。これに伴い、NVIDIAは利益率が高く競争力のあるサーバー・データセンター向けのH20 GPUを再び生産し、中国市場へ投入する計画を立てていました。しかし、この再生産計画を巡って、NVIDIAは想定外の問題に直面していることが明らかになりました。
台湾の経済紙「工商時報」によると、NVIDIAはH20 GPUの再生産に向けて製造委託先であるTSMCに改めて発注を行ったものの、TSMC側はH20 GPU用ウェハーの生産再開に難色を示しているとのことです。その原因としてTSMCはH20 GPUが規制対象となった時点で、その生産設備を他の製品の製造ラインに割り当ててしまっているため、再びH20の生産ラインを準備し市場に投入するまでには、かなりの時間を要すると見られています。
また、この半導体ウェハーの供給問題を受け、他のサプライチェーン関連企業もH20 GPU製造ラインの再稼働には消極的であるとのことで、NVIDIAの思惑通りにH20の迅速な再生産を進めるのは困難な状況となっているようです。
この状況を受け、NVIDIAは戦略の転換を迫られている可能性があります。同社は既に生産済みであったH20 GPUの在庫を一定数抱えており、これらは決算において評価損として計上されています。そのため、NVIDIAは当面、この既存在庫の処分に注力して評価損の回収を図りつつ、中国での市場シェアを確保する新たな手段として、既存のH20ではなく、最新鋭のBlackwellアーキテクチャを採用した「B20 GPU」や「B30 GPU」、あるいはワークステーション向けの「RTX PRO 6000D」といった新製品の投入を検討しているようです。
Blackwellアーキテクチャを採用した製品であれば、TSMCでは既に同アーキテクチャを採用する他のGPUが生産中であるため、生産ラインの調整は比較的容易です。また、他のサプライチェーン企業にとっても、今後2年程度はBlackwell関連製品の生産が続くと見込まれるため、新たな生産ラインを立ち上げる動機付けになります。
しかし、仮にBlackwellアーキテクチャを採用する高性能GPUが中国市場向けに優先的に供給されることになれば、コンシューマー市場にも影響が及ぶ可能性があります。これらのデータセンター向けGPUと、GeForce RTX 5090などが搭載するGB202 GPUは、同じBlackwell世代の製品としてTSMCの生産能力を分け合うことになります。そのため、中国向けの需要が増大すれば、RTX 5090などのコンシューマー向けハイエンド製品の供給量が減少する懸念があります。
さらに、H20 GPUで採用されていたメモリはHBM2eですが、Blackwell世代のGPUはGDDR7メモリを採用しています。中国向けデータセンターGPUの生産が増えることで、GDDR7メモリの需給が逼迫し、GeForce RTX 5000シリーズ全体の供給量減少や価格上昇につながる可能性も否定できません。
そのため、もし2025年内にグラフィックスカードの購入を検討している方は、NVIDIAが中国向けGPUの供給戦略でどのように立ち振る舞うのか、その動向に少し注意を払っておくと良いかもしれません。
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