NVIDIA ARMチップ『N1 / N1X』 が2026年に発売延期。深刻な設計不良が原因
NVIDIAは、同社がまだ参入できていないコンシューマー向けCPU市場への進出を計画しており、その第一弾として、MediaTekと共同でArmベースのチップセット『N1』および『N1X』を開発していると噂されています。
当初、このチップは2025年5月開催のComputexで発表されると見られていましたが、実際には発表は行われませんでした。これについて、当初はQualcommの「Snapdragon X」シリーズの売れ行きを見極めるために発表を延期したのではないか、という見方もありました。しかし、SemiAccurateの報道によると、実際には別の深刻な問題が発生していたようです。『N1』および『N1X』のハードウェアに致命的とも言える欠陥がComputexの開催前に見つかり、その結果、発売が2026年後半へと大幅に延期される見込みであることが明らかになりました。
同サイトによると、NVIDIAが開発中の『N1』『N1X』は、もともと2025年内のリリースが予定されていました。しかし、2025年4月頃に最初のハードウェア上の欠陥が発見されたとのことです。この欠陥は非常に深刻で、チップの再設計(リスピン)が必要となり、発売を2026年後半に延期する方針で動き出したとされています。
ところが、その後ファームウェアによる修正でリスピンが不要な状態にまで改善できたため、NVIDIAは発売予定を2026年初頭へと前倒しし、開発を再開したとのことです。
しかし、2025年7月に入ってから別のさらに深刻な技術的問題が発覚。今度こそ再設計が避けられない状況となり、発売が2026年後半まで延期されることが決定的になったと報じられています。
この深刻な不具合の詳細は不明ですが、リスピンとは、チップの物理的な回路設計を根本からやり直し、再度製造することを指しすことからその深刻さが伺えます。このプロセスには、設計の修正、フォトマスク(回路の原版)の新規作成、テストウェーハでの試作、そして修正されたチップの完全な再検証といった、多くの時間とコストを要する工程が含まれます。
『N1』『N1X』が採用するとされる4nmプロセスの場合、この一連の作業には短くても3~6ヶ月、設計変更の規模によってはそれ以上の期間を要すると見られています。そのため、急ピッチでリスピン作業を進めても発売は2026年後半となり、今後の展開次第では2027年初頭にずれ込む可能性も考えられます。
もし『N1』『N1X』が当初の計画通り2026年初頭に発売されていれば、Qualcommの次世代チップと同時期に登場し、AMDの「Zen 6」やIntelの「Nova Lake」といった競合の次世代CPUに対しては半年以上先行することが可能でした。そうなれば、出来栄え次第で、これらx86系CPUの採用を計画していたPCメーカーに『N1』『N1X』を売り込み、一定の市場シェアを獲得できた可能性があります。
しかし、発売が2026年後半にずれ込み、「Zen 6」や「Nova Lake」と同時期の登場となれば話は別です。多くのPCメーカーは、実績があり成功の確率が高いx86系CPUを選択する可能性が高く、『N1』『N1X』の採用はごく一部の製品に限られてしまうかもしれません。そうなれば、先行するQualcommのSnapdragon Xシリーズが直面している苦戦と同様の道をたどる懸念も出てきます。
とはいえ、NVIDIAにはAI事業で得た莫大な利益と高い技術力があります。それらを背景に、PCメーカーへ採用を強力に働きかけたり、大規模なマーケティングを展開したりといった「力技」も不可能ではありません。果たしてこのN1、N1Xがいつ発売できるのか、また発売された際に競合製品とどう戦っていくのか、今後の動向が注目されます。
Nvidia’s CPU dreams hit another delay | SemiAccurate
https://www.semiaccurate.com/2025/07/14/nvidias-cpu-dreams-hit-another-delay/
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