AMDがRyzen 9000はRyzen 7000X3Dをゲーム性能で超えられない事を明らかに
AMDが2024年7月に発売予定のRyzen 9000シリーズでは、フロントエンドの改善に加え、L1キャッシュサイズの増大とL1/L2キャッシュの帯域幅をZen 4に対して2倍程度拡大したことが明らかになっており、IPCもZen 4に対して平均16%上回ると言われています。
そのため、このRyzen 9000シリーズはゲーミング時の性能に関してもRyzen 7000X3Dに迫るのではないかとも言われていましたが、AMDのシニア・テクニカル・マーケティング・マネージャーのDonny Woligroski氏がTom’s Hardwareに語った内容によると、Ryzen 9000シリーズはRyzen 7000X3Dに対してゲーミング性能で超えることは無い見込みを示しました。
AMDはRyzen 9000シリーズのプレスリリースにて、同CPUは『世界最速のコンシューマー向けデスクトップCPU』であると記載し、ベンチマークにおいてもDefault Profile状態のCore i9-14900Kに対してゲーミング時の性能では平均約11%上回っている事を明らかにしています。しかし、それでもゲーミング性能が最速とは謳っておらず、ゲーミング向けで性能面でも評価が高いRyzen 7 7800X3Dとも比較していませんでした。
そのため、Tom’s HardwareがRyzen 9 9950Xはゲームでも最速かどうか尋ねたところ以下の返答が得られたそうです。
(Ryzen 9 9950Xが)ゲームで最速化? 我々のテストでは競合他社より速い事はわかっているが、X3Dは依然として王座にある。ただ、その差は通常よりも小さく、Ryzen 7 7800X3DはRyzen 7 9700Xよりも高い性能だが、みんなが想像するほどの差はないかもしれない。
Donny Woligroski AMD テクニカル・マーケティングマネージャー
AMDのX3Dのゲーミング性能が次世代アーキテクチャーを超えていた例はZen 4の時もあり、Ryzen 7 5800X3Dに対してRyzen 9 7950Xのゲーミング性能は約8%劣っていたことが過去にはありました。また、このゲーミング時の性能を超えられたのはRyzen 7 7800X3Dであるため、ゲーミング性能については例えZen 5アーキテクチャーに刷新されたとはいえ、Ryzen 9 9950XでもRyzen 7 7800X3Dを超える事は難しいようです。
ただ、今回はX3Dと非X3DであるRyzen 9000シリーズとの差は小さいとも述べていますが、これはZen 5化によるIPC向上に加え、より高速なL1とL2キャッシュによる効果と見られています。
さらに、動作クロックについてもスペック上はRyzen 7000シリーズとほとんど変わらないRyzen 9000シリーズですが、改善点としてより低い消費電力と発熱によりブーストクロックに長く留まる事が可能になっている事もX3Dに近い性能の理由であるとAMDクライアント・ビジネス本部長のDavid McAfee氏が述べています。
Ryzen 9000シリーズは仕様上は先代(Ryzen 7000)と同じ最大動作クロックですが、最大クロックで動作できる時間が、効率や熱設計の改善により延長されています。最終的に、消費電力と発熱を増やさずにより高い性能を提供するため、非X3DであってもX3Dに非常に近い性能を実現しました
David McAfee クライアント・チャンネル・ビジネス部長
実際にRyzen 9000シリーズでは最上位のRyzen 9 9950XはTDPが170Wで据え置かれていますが、Ryzen 9 9900Xでは170Wから120Wに、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは105Wから65Wに低減されています。ただ、動作クロックは変わりないため、McAfee氏が述べる通り消費電力と発熱が低減された事で、動作クロックの高い状態で長時間維持することが可能になります。そのためRyzen 9000シリーズは3D V-Cacheによるアドバンテージは無いですが、動作クロックによって性能を高めてX3Dとの差を小さくするようです。
ちなみに、動作クロックがより長時間、高い状態で持続できる場合、ゲーミング性能も上がりますがレンダリングや動画エンコードなどクリエイティブ用途で大幅な性能向上が期待できることにも繋がります。
Ryzen 9000シリーズではL1/L2キャッシュの高速化に加え、8000 MT/sメモリーにも対応していることからRyzen 7 7800X3Dを超えるゲーミング性能も期待されていましたが、流石に3D V-Cacheには敵わないようです。ただ、逆に言えばIPC向上やキャッシュとメモリーの高速化に加え、低発熱と省電力化によるブーストクロック持続時間の延長がRyzen 9000X3Dにも反映される事を意味しているため、Ryzen 9000X3Dのゲーミング性能についてはかなり高い期待が持てそうです。
ですので、もしゲーミング目的でPCを組み立てる事を考えている人はRyzen 9000X3Dの登場を待った方がよさそうです。一方で、ゲームもクリエイティブ用途でもPCを使う場合は特にブーストクロックの持続時間延長はエンコードやレンダリングと言った作業で大幅な性能向上に繋がると予想されるため、このような方はRyzen 9000シリーズをそのまま買ったほうが生産性は上がると言えそうです。
と言っても今回はAMDの中の人からの発言であるため、実際にベンチマークでどのような結果を残せるのか注目する必要はあります。
AMD’s Ryzen 9000 won’t beat the previous-gen X3D models in gaming, but they’ll be close — improved 3D V-Cache coming, too | Tom’s Hardware
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