ノートPCにはSO-DIMMと呼ばれるメモリー規格が長年採用されてきましたが最近のノートPCでは筐体サイズを極限まで薄くするためにメインメモリーにはんだ付けし、後からメモリー増設が不可能なモデルが多くなっています。しかし、この現状を変える新しいメモリー規格『CAMM』が間もなく策定されメモリー増設が復活する可能性が出てきています。
薄型ノートPCでもメモリー増設を可能にする『CAMM』が間もなく策定。2024年にはメモリー増設がまた復活する可能性。
ノートPC向けに搭載されている取り外し可能なメモリーモジュールにはSO-DIMMと呼ばれる規格が長らく採用されていましたが、規格自体が1990年代に策定されたこともあり近年主流となりつつある薄型ノートPCではモジュールサイズが大きく薄型化の制約になる事から採用されない事が多くなっています。
そのため、最近のノートPCではメモリーがマザーボードに直接半田付けされている例が多くなり購入後にメモリーを増設する事は不可能となっていましたがこの状況が変わるかもしれない新しいノートPC向けメモリー規格『CAMM』が2023年の内に正式に策定されるようです。
このCAMMについてはDellが特許を持っているようですが、クロス・ライセンシング制や安価なロイヤリティーでの提供が行われる見込みでDellのTom Schnell氏によるとメモリー規格の業界団体JEDECにてバージョン0.5が全会一致で可決されたとのことです。
このCAMMについては今後、2023年下半期までに正式策定となるバージョン1.0に向けて準備を進め、2024年には早速この新しいCAMMを搭載した薄型ノートPCなどが発売される予定とのことです。
CAMMメモリーモジュールとは?
このCAMMメモリーはCompression Attached Memory Moduleと呼ばれるメモリー規格でCPUのLGAのような形でメモリーを圧着させて通信を行う形になっています。このCAMMメモリーのメリットとしては、圧着式であるためメモリーモジュールを従来のSO-DIMMに比べて薄くできます。
CAMMではSO-DIMMに比べてCPUからメモリーまでの信号線の距離を半分程度に短縮が可能になり高速化にも寄与します。DELLが示した特許資料によると、SO-DIMMではCPUからSO-DIMMスロットまで配線し、そこから折り返してメモリーモジュールへ配線される一方で、CAMMではCPUからすぐにCAMMを通じて各メモリーモジュールへ配線する事が可能となるため配線距離がSO-DIMMに比べて半分になります。
この配線距離の短縮はDDR5や今後登場するDDR6などメモリータイミングがシビアな高速メモリーで効果を発揮するとともに、配線距離が短くなることでメモリーの消費電力低減にも寄与するとの事です。
他にもCAMMモジュールの大きさ次第では128GBと言った大容量メモリーの搭載が可能になったり、ネジでメモリーを固定する事から信頼性の向上、そしてCAMMコネクターがヒートシンクの代わりとして機能するため排熱面でも有利となるようです。
なお、このCAMMモジュールに関してはコストはSO-DIMMに比べると高いようですので2024年に搭載されるノートPCは主にハイエンドモデルが中心になると見られますが、徐々にコスト低減が進むことは確実であるため2025年頃には一般的なミドルレンジ向けノートPCでも普及してくると見られています。
最近のノートPCは薄型モデルでは必ずと言っていいほどメモリーモジュールはマザーボードに半田付けされた状態となっているため、買う時にメモリー容量を多めに搭載する必要があるなど消費者からすると無駄の多いものになっていました。しかし、このCAMMが登場すればこのような現状が変わるため、CAMM規格の早期導入と普及が期待される所です。
なお、このCAMMではSO-DIMMに比べると薄く、性能面や拡張性も高くはなっていますが唯一のデメリットはCAMMモジュールを2つ搭載するという事は出来ないようです。そのため、SO-DIMMのように最初は8GBだけ搭載して後で8GB追加して合計16GBにすると言う拡張は出来ず、8GBから16GBに拡張する場合、16GBのCAMMメモリーモジュールを購入する必要があります。ただ、メモリーが足りないからとノートPCすべてを買い替えるよりは存分に安上がりですので、どちらにせよ早く様々なノートPCで採用されて欲しい所です。
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