AMDでは2022年6月9日にファイナンシャルアナリスト向けの発表会、Financial Analyst Day 2022を開催、この中でAMDの2022年から2024年に登場予定の新製品の概要やロードマップが明らかになりました。
絶好調のAMD、そのロードマップが明らかに
AMDでは2022年6月9日にファイナンシャルアナリスト向けの発表会であるFinancial Analyst Day 2022を開催、この中でAMDの過去から今までの話や、未来に向けてAMDの方向性と各CPUやGPUのロードマップが紹介されました。
なお、AMDの現況としては売上高や利益面で非常に順調で、年平均成長率は約56%と言う数字になっています。
他に、売上総利益や営業利益、1株利益も年々増加傾向にあり、2021年の結果は1株辺り2.79ドルと言う2019年から比べると4.4倍にも成長を果たしています。
これだけ高い売り上げを出せるようになると、企業としては設備や研究開発費に多くの資金を捻出する事が可能となるのですが、AMDでは高い利益を原資に2022年から2024年は更に攻めの姿勢で新製品を投入していくようです。
AMDの収益源でもあるサーバー・データセンター製品群
今後のAMDの成長を支える柱はサーバー・データセンター向け製品となっているようで、現在はPC、ゲーミング部門が収益の75%程度を支えていますが、将来的にはこれらを50%程度まで減らしEPYCやInstinctなどサーバー・データセンター向けの売上高を50%以上にまで拡大する計画のようです。
そんな、AMDですがサーバー・データセンター向け製品としてはまず2022年中に5nmで作られるZen 4搭載のEPYC Genoaを投入し、2023年にはV-Cacheが追加されたGenoa-Xと4nmのZen 4Cを搭載するEPYC Bergamoを投入、そして2024年には4nmのZen 5搭載するEPYC TurinとV-Cache搭載のTurin-X、そして2024年以降にZen5cを搭載したEPYCが市場へ投入される見通しになっています。
なお、2022年10月以降に登場する見込みのZen 4搭載のEPYC Genoaでは最大96コアを搭載し、メモリーはDDR5、PCIeはGen 5.0へと進化し、Zen 3を採用するEPYC Milanに比べると一部ワークロードでは約75%以上の高速化が望めるとの事。
また、Zen 4Cを搭載するBergamoの概要も発表され、最大128コア256スレッドである事やEPYC Genoaと同じソケットSP5に対応する事、そしてZen 4 ISAに対応しているため追加のソフトウェア開発などは不要でそのまま移行できる事がアピールされています。
デスクトップ向けZen 4 V-Cacheも登場予定。Threadripperも存在
デスクトップ向けのRyzenシリーズに関してはAMDの中ではサーバー・データセンター向け製品の拡大戦略に基づき若干手が抜かれるのでは無いかと見られていましたが、そのような事は無く新製品を継続的に出すように計画がされているようです。
まず、2022年中にはZen 4を搭載するRyzen 7000シリーズを発売、その後2023年中に3D V-Cacheを搭載するRyzen 7000X、そしてRyzen Threadripper 7000シリーズも用意するようです。このThreadripperについては恐らくProとなり無印は出ない見込みです。そして、2024年にはZen5アーキテクチャーを搭載するRyzen 8000シリーズが登場予定で、コードネームとしてはGranite Ridgeとなる予定です。
このGranite RidgeではAMDは『Advanced Node』と記載していますが、リークではこのGranite RidgeではIntelのAlder Lakeから投入されたハイブリッドアーキテクチャーのような構成になると見られており、高性能コアにはZen5コアを、高効率コアにはEPYC Bergamoに搭載されているZen 4Cを搭載すると見られています。
直近で登場するRyzen 7000シリーズについては、既にCOMPUTEX 2022で発表されている通りなのですが、新たな情報として5.5 GHz以上で動作する事や、IPCについても言及があり、8%程の向上が見込まれるとの事です。
ワットパフォーマンスについてもRyzen 9 5950Xと比べるとRyzen 7000シリーズ最上位モデルでは25%程度向上しているようです。
モバイル向けはAPUにRDNA3を内蔵してグラフィック性能を大幅強化
モバイル向けAPUについてはCPU性能のみならず、GPU性能の大幅強化を進めるようです。2022年にはZen 3+ CPUの他にGPUにRDNA 2を搭載したRyzen 6000シリーズを投入しましたが、2023年にはZen 4 CPUと共に最新鋭のGPUアーキテクチャーであるRDNA3を搭載したRyzen 7000シリーズ(Phoenix Point)を発売予定としています。2024年にはAdvanced Nodeという事でデスクトップ向けのGranite Ridgeと同じくハイブリッドアーキテクチャーが採用される見込みですが、GPUとしてはRDNA3+という事でRDNA3の改良版かRDNA 4など次世代GPUアーキテクチャーが採用される見通しになっています。
モバイル向けAPUに関しては、ミドルレンジぐらいのディスクリートGPUであれば不要となるぐらいの性能を持つようになるかもしれません。
AMDでは高い売上高と利益を原資に、新アーキテクチャーを搭載したCPUを矢継ぎ早に投入するようで、今年発売がされるRyzen 7000シリーズ以降も3D V-Cache化など年1で新製品が登場する予定となっているようです。また、力を入れているサーバー・データセンター向け製品のEPYCについては、特に2023年から2024年にかけては様々な種類のEPYCが投入されるようで、同じ年にIntelではAMDに対して1~2世代程度遅れたXeonしか投入できない事を考えると更なる躍進が見られるかもしれません。
ただ、今回のFinancial Analyst Day 2022で少し心配になったのがコンシューマー向け製品です。AMDではサーバー・データセンター向け製品で収益を多く上げる事を宣言しているため、何か予定通りに開発が進まなかったとすると真っ先にコンシューマー向け製品が優先順位として落とされる事となるので、例えばTSMCのキャパシティー不足となればEPYCを優先し、Ryzen 8000シリーズの投入が遅れるという事もあり得そうです。
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