台湾のTSMCが半導体製造価格を2021年に20%、そして2023年に約8%引き上げることを発表していますが、韓国のサムスン電子も半導体製造価格を近いうちに20%ほど引き上げることを検討しているようです。
TSMCに続いて値上げへ
韓国サムスン電子、半導体製造最大20%値上げで交渉中-関係者
TSMCでは2021年に約20%値上げを実施し、その後2023年頃からも更に5~9%値上げを実施することを発表していますが、韓国のサムスンでは20%程度の値上げを各顧客に対して通達、現在交渉を開始しているとBloombergより報道がありました。
値上げ幅は20%に。レガシープロセスは更に上昇。主な原因は原材料高騰?
Bloombergによると、サムスンでは半導体製造を請け負う顧客に対して、供給価格を20%ほど値上げする方向で交渉を開始しているとのことです。
原因として挙げられているのが原材料と物流コストの高騰によるものが挙げられていますが、TSMCと同じく開発中の先端プロセスに対する設備や研究開発費高騰も今回の値上げ分に含まれていると見られています。
関係者によると、大多数の半導体は15~20%の値上げになる見込みですが、製造プロセスによってこの値上げ幅は異なり、8nmなど最新のプロセスの他、28nmや40nmなどのレガシープロセスと呼ばれる古い製造プロセスの製品では20%以上の値上げが行われる可能性があるとのことです。
この値上げについてはサムスン側は2022年7月から12月の間で適用することを目標にしているとのことで2023年にはサムスンで製造される半導体のすべてで値上げが適用されると見られています。
コスト高騰でさらなる顧客離れへ?
サムスンで製造される半導体については歩留まりが低い事が明らかになっており、サムスン8nmを採用したNVIDIA GeForce RTX 3000シリーズが発売された当初は、品薄の主要因としてサムスンの歩留まりの低さが挙げられていました。また、より最新プロセスであるサムスン4nmを採用したクアルコムのSnapdragon 8 Gen1については歩留まりが35%程度で有ることがリークとして出現していました。
このように、あまり良い評判ではないためか、NVIDIAではGeForce RTX 4000シリーズからはTSMCに、クアルコム社は低い歩留まりの他、発熱が大きいなどを懸念し、たった1年でTSMC 4nmに変更したSnapdragon 8 Gen 1 Plusに全面切り替えを行うなど主要な顧客が次々と離れていっている状況にあります。
ただ、サムスンについては半導体製造価格が、出来高払いになっており完動する半導体に対して支払いを行う一方で、TSMCについてはウェハー1枚辺りの価格で支払いを行う必要があります。このような契約形態の違いから一般的にはサムスンの半導体のほうがコストは低くなりそれがNVIDIAやクアルコムを惹きつけた理由の一つでもあります。しかし、今回の大幅値上げによってコストが低いというアドバンテージは大きく失われると見られており、将来的には顧客離れがより顕著化する可能性があります。
TSMCに続き、サムスンも半導体製造価格を引き上げていますが、サムスンの場合、TSMCとは異なりNVIDIAやクアルコムなど大口顧客を失い続けている中での値上げとなっているため、サムスンは顧客側からは足元を見られた状態となりそうです。ただ、サムスン側からすると、これだけの評判でサムスンに頼む顧客は『TSMCの生産枠を押さえられなかった』と見るため両者引けない価格交渉合戦となりそうな気がしますね。
ちなみに、今回の値上げでサムスンのポイントとしては、28nmなどレガシープロセスを4nmや8nmなど先端プロセスより値上げがされる点です。サムスンの半導体製造価格はTSMCと異なり出来高制のため、レガシープロセスほど歩留まりは高く、サムスンとしては儲けやすくなっています。また他、レガシープロセスについてはTSMCやGlobal Foundryなど大手半導体ファウンドリーはパンク状態であるため、身動きが取れない状態になっています。そのため、レガシープロセスを委託している顧客側は不満でも今回のサムスンの値上げについては受け入れざる得ないと言えそうです。これを原資にサムスンとしては原材料高騰をカバーしつつ、先端プロセスの開発費に充てると見られています。