AMDでは低い解像度で描写したグラフィックスを、4Kなどにアップコンバートする技術「FidelityFX Super Resolution 1.0」をすでに一部ゲームで導入していますが、この技術の最新版である2.0がまもなくリリース予定で海外サイトがNVIDIAの同様技術であるDLSS 2.0との比較レビューなどを掲載しています。
FSR2.0でNVIDIA DLSSへ対抗
AMDでは解像度をアップコンバートする機能としてFidelityFX Super Resolution(FSR1.0)を2021年にリリースしましたが、このFSR1.0では描写している1フレームに対してアップコンバートを行うアルゴリズムを適用するというシンプルな方法を利用してアップコンバートをしていました。
ただ、この手法では一連のフレームかつ機械学習を活用しているNVIDIAのアップコンバート技術であるDLSS 2.0に対しては劣る点が多くありました。しかし、AMDではこのDLSS 2.0へ対抗するべく、FSR 2.0をまもなくリリース予定としており、TechPowerUPがこのFSR 2.0の技術概要やDLSS 2.0と比較したレビューを掲載しています。
DLSS 2.0に対する最大長所は事前の機械学習不要
FSR 1.0では処理方法としては、ポストエフェクト的な処理を採用しており、レンダーとアンチエイリアス処理、トーンマッピングが完了した後のフレームに後処理としてアップコンバートを施すものになっています。
※詳細な処理についてはこちらで紹介がされています。
そのため、ハードウェア的な制約もなく様々なゲームにFSR 1.0を実装する事が可能で、NVIDIAのDLSS 2.0のようにTensor Coreを搭載した一部グラフィックスカードでしか動作しないという制約やNVIDIA側のサーバーで事前学習を行う必要などが無く簡易的に導入が出来ます。一方。FSR 1.0ではアップコンバートした際の画質の向上代がDLSS 2.0と比べると少なく、FSR 1.0をオンにすると明らかに解像感が減る状態となっています。
そんな弱点を克服したのがFSR 2.0でとなっていますが、FSR 1.0と基本的な仕組みは一緒でレンダーとアンチエイリアス処理、トーンマッピングが完了した後のフレームに後処理としてFSR 2.0が施される仕組みになっています。ただ、FSR 1.0との大きな違いとしては、後処理をする際に参照する情報が追加されており、処理を施す最終フレームの深度、モーションベクター、カラーバッファー情報をFSR 2.0へ送り込み、更にFSR 2.0側では最終フレームの一つ前のフレームを参照するようになっています。
このように情報量が増えた事で画質やFSR 2.0利用時に出現する不自然なエフェクトが低減す見込みとなっています。例えばモーションベクターを取り入れる事でピクセル移動が明らかとなり、大きく動いた箇所にはFSR 2.0の処理を弱めゴースティング現象を低減する事が可能となります。他にも画質向上のために機能が追加されていますが、詳細はTechPowerUPに記載されていますので、興味ある方はアクセスしてみてください。
AMD FSR 2.0 Quality & Performance Review – The DLSS Killer | TechPowerUp
なおFSR 2.0についてはDLSS 2.0のように機械学習ベースでは無くポストエフェクトであるためTensor Coreのようなハードウェア上の制約は無く、事前の機械学習についても不要となっています。そのため、Radeonシリーズはもちろん、NVIDIAのGTX系GPUでも動作する事が可能となっています。
ただ、FSR 1.0に比べると最終フレームの深度、モーションベクター、カラーバッファー情報をFSR 2.0に送り込む必要があるため、既存のゲームにFSR 2.0を適用させるのはFSR 1.0ほど簡単では無くなってしまう見込みです。
FSR 2.0で画質が大幅向上。DLSS 2.0に近づく
TechPowerUPではDEATHLOOPを用いて4K、1440p、1080p解像度において、ネイティブ解像度、FSR 1.0、FSR 2.0、DLSS 2.0 で同一シーン比較がされています。なお使われたGPUはNVIDIA GeForce RTX 3060とRTX 3080になっています。
FSR 1.0や2.0では画質設定が存在しており、画面へ出力する際のスケーリングはウルトラパフォーマンスが3倍、パフォーマンスが2倍、バランスが1.7倍、クオリティーが1.5倍になります。ここでは主に4Kバランス設定の画面キャプチャーを取り上げますので、2259×1270で描写がされた映像を4Kへアップコンバートがされたモノになっています。
4Kネイティブ解像度 vs FSR 2.0(バランス)においては差はほとんど見られませんが、フレームレートは30fps向上しています。
次がFSR 1.0とFSR 2.0の比較ですが、FSR 1.0では明らかに解像感が損なわれており、画面真ん中の電線部分は明らかに画像を引き延ばしたような不自然な見た目になっています。一方でFSR 2.0では電線部分も解像感を損なうことなく描写がされています。
次にDLSS 2.0とFSR 2.0の比較ですが、見た目では同等レベルにあると言えます。細かな点まで見るとDLSSの方が家の外壁部分もテキスチャーが若干シャープに見えます。また、パフォーマンスについてはDLSSの方が1歩上と言う数字になっています。
TechPowerUPではFSR 1.0/FSR 2.0/DLSSをサイドbyサイドで比べた動画も掲載されています。
なお、動画を見ているとFSR 2.0ではゴースティングがDLSSに比べて出てしまっている傾向にあるので、今後の調整に期待です。
革命的なFSR 2.0。ゲーム開発者が付いてくるかが鍵
FSR 2.0についてはDLSSのように機械学習や機械学習用アクセラレータ(Tensor Core)を用いずに同等レベルのアップコンバート品質を確保している点は革新的な技術と言えそうです。
特にAMDではこの手のアップコンバート技術に関してはNVIDIAに対して遅れを取っていた分野でもありますので今回のFSR 2.0で追いついたと言えそうです。ただ、FSR 2.0対応ゲームについては現時点では11タイトルしか無く、今後NVIDIAに対してAMD Radeonの優位性をアピールするのであれば、より多くのゲームがFSR 2.0対応となるように働き掛ける必要があります。
FSR 1.0が個人的に期待外れだった所があったので、FSR 2.0もあまり期待していませんでしたがレビューを見る限り非常に良好な画質に仕上がっており、リリース後も調整がされ続ければDLSSと全く同じぐらいの画質にまで追いつけそうなレベルになっています。正直、驚きです。
このFSR 2.0についてはTensor Coreなど不要な点は大きく、PlayStaiton5やNintendo SwitchなどコンソールからSteam DeckなどAPU搭載機でも使えるため、AMDがゲーム開発者へ必要なサポートなどを適切に提供できればどのゲームにも設定がされるぐらい画期的なものと言えそうです。
AMDでは今後、RDNA3+Zen 4を載せたモバイル用APUのRyzen 7000H/HS(Phoenix)をリリース予定ですが、FSR 2.0と組み合わせれば薄型ラップトップで高画質にゲームを楽しめるような時代になりそうですね。また、Radeon RX 6500 XTなどあまりパワーのないグラフィックスカードでも多くのゲームが楽しめるようになりそうですので、ゲーミングPC人口を増やすキッカケにもなるとも言えそうです。
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