2022年に入り始めてから下落の一途を辿っているGPUの販売価格ですが3DCenterがまとめる欧州での販売価格情報の4月中旬版が発表されましたが、今回も先月に比べて10%程度の下落が記録されています。また、日本においても円安など逆風があるにも拘らずGPUの価格下落傾向が確認されています。
定価まであと一歩に近づくGPU販売価格
GPUの販売価格は2021年では定価に対して最大3倍、平均では2倍程度の価格で取引される事が常態化している状態となっていました。この原因としては新型コロナウイルスによるGPU製造を請け負うサプライチェーンの混乱による供給減、一方でステイホームやEthereum価格の高騰による需要増大によって引き起こされていました。
しかし、2022年に入ると供給面では大きく改善し、需要面では新型コロナウイルスに伴う規制緩和やEthereum価格の下落により需要は大きく減少、これにより2022年1月頃は定価に対して1.7倍程度あった販売価格が2022年2月には1.5倍程度に、そして最新の2022年4月中旬にまとめられたレポートでは遂に定価まであと一歩の1.1~1.2倍程度にまで下落しているようです。
また、今までGPUの販売価格下落の面ではあまり動きが無かった日本での販売価格も大きく値を下げる傾向が確認され始めています。
Graphics card price trend 2021/22 🇩🇪🇦🇹, updated Apr17
👉 Prices down once again, MSRP in sight and sometimes already reached, availability great.
👉 But excitement is low on Ampere/RDNA 2. People expect LESS than MSRP, as Ada/RDNA 3 is already on horizon.https://t.co/YZnsO0bEXl pic.twitter.com/CRAATbE0su
— 3DCenter.org (@3DCenter_org) April 18, 2022
NVIDIAは定価の1.2倍、AMDは1.1倍に下落。在庫量は4か月連続で過去最高を更新
3DCenterでは2021年1月から月に2回、ドイツやオーストリアのパソコンパーツ販売店で売られているGPU販売価格をまとめています。
この集計ではピーク時の2021年5月頃には定価に対してNVIDIA製GPUは約3倍、AMD製で約2倍を記録し、それ以降も若干販売価格が下がったものの平均する定価に対して約2倍程度で販売が半年以上行われていましたが2022年を境にGPUの販売価格は一転。2022年1月には定価に対して1.8倍程度だった販売価格が2か月後の3月初旬には1.4倍程度と2割程度値下げされています。
2022年4月中旬に集計された最新の結果ではNVIDIA製GPUが1.2倍、AMD製GPUが1.12倍と定価水準に近い状況になっており、3月初旬の販売価格に対しては約15~18%程度の値下げが記録されています。
GPUの販売価格に大きな影響を及ぼす在庫状況ですが、こちらも2021年秋頃は横ばいを維持していましたが、2021年12月にかけて徐々に在庫量は増加、そして2022年になると集計が集められる度に過去最高を記録する状況になっており、2022年4月中旬の結果も前月比増を記録しています。これにより、GPUの在庫量については4か月連続で過去最高を記録している事になります。
今現在発売がされているGPUについてはNVIDIA製はGeForce RTX 3000シリーズ、AMDではRadeon RX 6000シリーズとなっていますが、2022年秋頃を目途にNVIDIAとAMDでは現行世代モデルに対して性能が約2倍になる次世代GPUの発売を控えており、Intelは2022年6月に初のGPUであるArc Alchemistの発売を予定しています。そのため、GPUを取り扱っている小売店などでは節目となる新製品発売に向けて更に値下げ圧力が強まる事が予測されています。
日本でのGPU販売価格も下落中。RTX 3070は10万円を切る価格に。
3DCenterのまとめる情報はドイツやオーストリアなど欧州での販売価格情報で、日本の販売価格状況とはほとんどリンクはしていない状態が続いていました。しかし、2022年4月に入り始めると状況が徐々に変わり始めており日本でもGPUの販売価格値下げが行われ始めているようです。
GeForce RTX 3080に関しては玄人志向のモデルを例に挙げると前回、GPUの販売価格に関する記事を公開した2022年3月8日時点では146,800円で販売がされていましたが、2022年4月19日時点では最安値は134,800円と8%ほど安くなっています。
この玄人志向のGeForce RTX 3080は発売当初は11万円前後で販売されていたため、この時の価格を定価と考えると1.22倍となっていますが、3DCenterなど欧州での販売価格に近い状態とは言えそうです。
アッパーミドルレンジのGeForce RTX 3070はサンプルとしてMSI製のVENTUS 2Xを挙げると、このモデルは2022年3月8日時点では109799円となっていましたが、2022年4月19日時点では98,799円、一時的には94,800円で販売される事もあり、このモデルも1ヵ月で9%近い値下げが記録されています。
なお、このモデルについては発売当初は72380円となっていましたので、現在の価格は1.3倍程度にはなっていますがこのままのペースで価格が下がれば2ヵ月ぐらいで発売当初の価格に落ち着くと言えそうです。
ミドルレンジモデルであるGeForce RTX 3060では代表としてASUSのDUAL RTX 3060を挙げます。このモデルでは前回は76800円が最安値となっていましたが、2022年4月19日時点では66,259円と14%近い値下げを記録しており、他のGeForce RTX 3000シリーズに比べると値下げ幅が大きくなっています。
円安の影響も心配されるが、それ以上にGPU本体が値下がりしている?
最近、為替市場ではドル高、円安と言う状態が激しさを増しており、2022年3月初旬頃は1ドル115近辺でしたが、3月下旬にかけて1ドル120円、4月19日現在では126円とたった1ヵ月で10%も為替レートが変わりました。GPUやCPUなどPCパーツは海外から輸入されているため、単純計算すると10%値上げが行われても不思議な状況では無く、実際にASRock製のAMDマザーボードやPCケースについては近日中に10~20%程度値上げが行われる予定との事です。
ASRockのAMD系マザーボードが複数のショップで値上がり、18,980円→26,290円など (取材中に見つけた○○なもの) – AKIBA PC Hotline! (impress.co.jp)
この値上げ自体は円安だけが原因では無く、物流コストの増大なども関係していると見られていますがGPUについては今のところ円安値上げの影響をあまり受けている様子は無く、価格が下がる方向に推移しているため円安による値上げ以上にGPUのAIB卸売価格の値下げや量販店や代理店側がマージンを削るなどして在庫を売り捌こうとしている可能性がありそうです。
GPUの販売価格が下がった!と言う話は何度かこのブログでも取り上げていますが、大体は海外の話で日本はずっと高いままと言う状態が続いていました。しかし、ここ最近明らかに右肩下がりな感じで価格が下がり始めているので、各社代理店や量販店ではArc AlchemistやNVIDIAやAMDの次世代商品を意識し始めて値下げに踏み切っているのかもしれません。
売る側も極力利益を確保したいので恐らく値下げについてはゴールデンウイークなど数量限定でセールと言う形で一時的に大幅な安値で販売はされるものの、恐らく2ヵ月や3か月程度かけてゆっくりと値下げを行うスタイルな気がします。そのため、NVIDIAやAMDの最新鋭GPUに興味が無いという方であれば量販店などが在庫が売り切れるかヒヤヒヤしている夏頃などを狙って買うと最も安く買えるかもしれません。ただ、懸念点としては上で挙げた円安や物流費の高騰などがありますが、このようにとにかく最安値で買いたいとずっと考えているとGPUはいつまで経っても買えないので、GPUの購入は株取引のように「頭と尻尾はくれてやれ」精神で買った方が幸せになれると思います。
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