Appleが発表したMac Studioに搭載されるSoC、M1 UltraにはCPUでは高性能コアを16基、高効率コア4基で合計20コアを内蔵し、性能面ではIntel Core i9-12900Kなど16コアCPUを100Wも少ない消費電力でありながら、大きく上回る性能を発揮すると発表会では発表していましたが、この条件もGPUの性能と同じく、極めて限られた条件だけだったようです。
20コアCPUを内蔵するM1 UltraとIntel Core i9-12900K
Appleでは2022年3月8日に新商品発表会を実施しその中で小型デスクトップであるMac Studioを発表と同時にこのPCに搭載される新SoC、M1 Ultraを発表しました。
このM1 UltraにはCPUが高性能コア16コアと高効率コア4コアを搭載した20コア構成となっており、CPU性能に関してはAppleによると16コアを搭載するCore i9-12900Kより100W程度消費電力が少ない一方で性能面では大きく上回ると発表が行われていました。
しかし、CPUパフォーマンスに関して様々なベンチマークを行ってみたところ、発表会通りになるのは極めて限られた条件だけで実際にはCore i9-12900KやAMD Ryzen 9 5950Xを下回る性能となる事が多かったようです。
Geekbenchのスコアは間違いなく最高スコアだがCinebenchではそこそこ。
Mac Studio Review – The Need for SPEED – YouTube
CPU性能を測る上で、Geekbenchは誰でも見られるデータベースに掲載される事や様々なプラットフォームで利用できる事から比較的有名なベンチマークソフトとなっていますが、M1 Ultraに関してはこのGeekbenchにおけるスコアは24038ptを記録しており、Core i9-12900Kの18711ptに対しては1.28倍、Ryzen 9 5950Xの16218ptに対しては1.48倍とコンシューマー向けCPUを超え、Ryzen ThreadripperなどHEDT向けCPUに近いパフォーマンスを記録しています。
一方で、Geekbenchより比較的高い負荷がかかるCinebench R23ではGeekbenchとは異なる結果が出ているようです。M1 Ultraは24190ptを記録している一方で、Core i9-12900Kでは26313ptとM1 Ultraを9%ほど上回るスコアを記録しています。また、Ryzen 9 5950Xでは27113ptとなっているためこちらもM1 Ultraを12%上回るスコアを記録しています。
M1 Ultraを搭載したMac StudioのGeekbenchベンチマークの結果は発表会直後に出現していたことからAppleとしてはこのGeekbenchの結果を発表会では利用していたのでは無いかと見られています。
Mac Studio Review – The M1 Ultra is too Good! – YouTube
シングルコア性能でもM1 UltraはGeekbenchにて1793ptとRyzen 9 5950Xの1686ptやCore i9-11900Kの1748ptを超える高いスコアを記録していましたが、こちらもCinebenchになると話が変わるようです。
Cinebench R23においてはM1 Ultraのシングルコア性能は1536ptを記録しており、Core i9-12900Kの1884ptやモバイル向けCPUであるCore i9-12900HKの1891ptに対して約19%ほど下回るスコアとなっています。
BlenderでのレンダリングスコアではRyzen 9 5950Xより約18%下回る
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Cinebenchで苦戦していたM1 Ultraですが、似たワークロードでもあるBlenderにおけるCPUでのレンダリングベンチマークにおいてもM1 Ultraは若干苦戦気味となります。スコアはM1 Ultraでは379.69ptを記録していますが、Ryzen 9 5950Xに関してはこのベンチマークでは461.74ptを記録しておりM1 Ultraが18%ほど下回る結果となっています。ただ、Core i9-12900Kに対してはM1 Ultraが約4%の僅差で上回っています。
動画エンコードではM1 Ultraが圧倒的だがMedia Engineが使われている可能性あり
10分の6Kで撮影された動画を4K H.264へエンコードする作業においてはRyzen 9 5950Xが14分近く、Core i9-12900Kが12分近くかかる一方で、M1 Ultraでは9分台でエンコード作業が完了しています。Core i9-12900Kと比べると20%以上の高速化が実現されていますが、Adobe PremiereではM1 Macに搭載されている動画のデコードとエンコードを行うMedia Engineが搭載されています。そのため、このスコア差はこのMedia Engineによる差の可能性がありますので、この辺はより詳細なベンチマーク結果を待つ必要がありそうです。
M1 UltraのCPU性能についてもCore i9-12900Kと比べたグラフが発表会で用いられており、非常にインパクトのあるグラフにはなっていましたが蓋を開けてみると、消費電力面では低いようですが性能面についてはあのグラフのようにCore i9-12900Kを圧倒的に超えるかと言われると「?」な結果となっています。
Appleとしては新商品発表会という事でインパクトのあるアピールをしたかったのだと思いますが、M1 Ultraを搭載するMac Studioは主にプロ向けの商品であるため、ここまで盛った表現をしてもそれを真に受ける人はあまりいなかったと思いますので正直あまりグラフを出してまで「性能が優れている!」と表現するのは良くなかったのでは無いかと思います。
ただ、勝手な推察ですがこの発表会では新型iPhone SEや新型iPad Airなど一般向けの商品も同時発表されていました。恐らくAppleとしてはこういった一般ユーザーに向けてApple製品の性能は高いというイメージ作りをするためにあえてこのような盛ったプレゼンを入れ込んでいたのかもしれません。
コメント
コメント一覧 (3件)
やっぱり…
なんか怪しさ満点だったもんなぁ
元がスマホ用でM1はそれの拡大版に過ぎないってことで、一般的な用途ではかなり高性能だけど負荷がかかる用途だとそれほどでもないってことなんでしょうねぇ
こんなpcいらんわ
12900kの約半分の消費電力でこのスコアなら上出来だと思う。